りっけいのゆる旅

自転車や旅をつらつらと

【国道7号線キャノボ】ちょっと24時間で515km走ってきた【後編】

…ピピッ ! …ピピッ !

 

むくり。

 

どこだっけ、ここ?

あたりを見渡す。

 

どうやらコンビニの駐車場のようだ。

 

「そうか、キャノボしてたんだったな」

5分の仮眠でも十分に眠れた。

 

 

257km走ってきた。あと半分。

残り12時間20分で走り切れば、キャノンボール達成となる(・д・;)…ゴクリ

 

 

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この記事は後編です!(*´ω`)

前編はこちらからドウゾー!

(まあ読まなくても大丈夫だよ)

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自転車にまたがる前に、かるく体操をする。

ぼくは首と肩に痛みが出やすいので念入りに。

 

うん、大丈夫だ。

疲れてはいるが、大した痛みにもならないだろう。

後半戦だ、張り切っていこう!!

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Garminから後半のルートを呼び出す。

ピロリン♪

Garmin「ロードできませんでした」

 

んん??(´゚д゚`)

 

もう一回。

 

ピロリン♪

「ロードできませんでした」

 

ふぁあああああああ!!!???

 

ルートが表示されないおおお(゚д゚ll)おおお

どうしよう、どうしよう、どうしよう。

 

 

気が動転する。アセリやすい性格なのだ。

 

暗くて青看板も読めやしない。しかも、ここからは走ったことない道だ。

スマホをナビ代わりにする?でもルートを今から引き直すのか?

 

落ち着け、落ち着け。

かるく深呼吸をする。

すーはー。すーはー。

 

 

よし。

すこしは気持ちが楽になった。

慌てちゃあいけない。

 

ちゃんと考えてみれば、どうといったことはない。

 

520kmの道は、頭の中に全部入っているはずだ。なんどもルートを引いてきたんだ。

コンビニも10件分の場所は分かるはずだ。

 

3か月間、入念に準備してきたんだ。

 

 

なんら慌てることはない。スマホの充電も十分にあるし。

 

ふう…大丈夫だ…。

きっと走れる。

 

心を落ち着ける。

 

この時点で、脳にもかなりの疲れが蓄積されていたんだろう。

負荷をかけないよう気を付けていたが、いかんせん長時間の思考を続ければ、脳もパニック起こしやすい。ここからは自分自身をコントロールできなければ、またパニックになりそうだ。

 

 

落ち着いていこう。

入念に準備をしてきたんだ。すーはー。

 

 

インナーとタイツを装着して、最大の防寒モードになる。

寒さよ、どんと来い!

 

 

もう真っ暗になった道を走り始めた。

 

 

ぼくはナイトライドが好きだ。

真っ暗な道を淡々と走るシチュエーションに萌える。

 

普通の人はご飯食べたり、お風呂入ったり、ゆっくり過ごしている時間帯だ。

なのに、僕だけが外で孤独に走る。

 

マゾかもしれないけど、それがたまらなく楽しい。

 

 

「なんでこんなことやってるんだろう?」ってあきれた気持ちと

「こんなことやってる僕ってかっこいい」って思いあがった気持ち。

 

この混沌とした感情だけでペダルを回せる僕は単純だ。

 

 

天候もかなりいい。星々がきらめく夜空を拝める。

風は吹き止んだようだ。潮の香りを楽しむ余裕もある。

太陽が出てないので、給水回数も減る。

 

先を急ぎながらも、ロングライドを楽しめている。休息をしっかり取れたおかげだろう。この時点で仮眠5分×2回だ。信号や山がないので回復に時間を割り当てられる。ありがたい。

 

街灯もまともにない真っ暗な道なので、知ってる道だろうが知らない道だろうが関係ない。Garminのナビがなくとも走っていける。2灯のライトが照らすその先を目指すだけ。イッツ、シンプル。

 

 

 ここまでは安心して走っていた。

300kmまでは走れる!!」と強く確信していた。

 

「300kmまでは走れる。300kmまでは走れる」と暗示をかけすぎたせいか…

 

 

走行距離が301kmになった瞬間に

 


唐突に絶望と狂気を感じた。

 

ついに精神がガタツキ始めた。

 

どうやら、ぼくの限界は300kmらしい。顔面スレスレに「死」が歩み寄ってきた。気持ちがしぼみだした。

 

生と死の境界線で反復横跳びしてんじゃねえの?

ここを越えると死ぬ。もう走らないほうがいい。いや、走りたくない。。。

 

もういいじゃないか。14時間で300km走れたんだ。もう終わりにしよう。

しおしおと枯れてきた。

 

……。

 

「…無理ですよ。いくら、りっけいさんでもキャノボは無理ですよ…」

記憶のトビラがひとつ開いた。

 

 

この言葉は、さとる君に言われた言葉だ。

2か月前の石川ツーリングで、さとる君はそんな一言を発した。

 

「新潟ー青森キャノボがしたい」と僕が話したとき、

さとる君は270kmソロライドの経験を踏まえて、そんなアドバイスをしてくれていた。確かに彼の言うことは正しいだろう。

 

ぼくなんてロード歴1年ちょっとの初心者だ。トレーニングなんてちっとも積んじゃいない。やっぱりできないんだ…。

 

 

頭の中で繰り返される。

「…無理ですよ…無理ですよ…」

 

 

いいや!!!!!ちがうね!!!!!

試してみきゃ、わかんないでしょ!!

 

 

理性で考えてみれば、無謀でムチャクチャな挑戦だ。

だけど、やれるところまでやってみなきゃ。

 

無理かどうかなんて俺が決める!!!

 

闘志がむくむく沸いてきた。

 

もうちょっとだけ戦ってみようじゃないか。だって精神がガタついてるだけでしょ。機材はノートラブルだし、身体も動く。脳からの睡眠指令も来ていない。

 

自分をコントロールしようぜ。

 

コンビニに寄ってモンスターをぐびりと飲む。

3年ぶりに飲むエナジードリンクが何よりもウマかった。身体が欲していた味だ。

 

さあ行こう。

またペダルを踏みロードバイクを進める。

 

ここから先の記憶があまりない。

自分を叱咤激励しながら走っていた気がする。

 

その途中。

こんなツイートをしている。

 

やはり相当キツイ思いをしていたようだ。 リプライで心配の声をもらっていた。

 

海岸線に沿った山道を延々と走っていた。真っ暗だから全部同じ道に見えていて、余計に精神がおかしくなっていた。

 

 

ついに身体にまで異変が起きた。軽い吐き気と風邪の初期症状だ。のどが痛い。水分を多めに取って、鼻呼吸に徹する。ネックウォーマーをぐいっと引き上げて、マスク代わりにする。のどの保湿のためにね。 

 

 

脳汁が出ているのが分かる。興奮剤と鎮静剤を打たれた気分だ。脚はプルプルと震える。

痛みなんてとうの昔に忘れた感覚だ。苦しくて当たり前だし、いまさら疲れも感じない。

 

 

車は一時間に一度見かけるほどで、世界にたった1人ボッチで置いて行かれた気持ちになる。

 

もう休みたいと駄々をこねる自分がいた。

「次の街に入ったら、宿を探そう」

「公園でもいいからぐっすり眠りたい」

「あ、ラブホがある。ラブホにでも良いから泊まりたい…」

 

 

そんな切ない気持ちを慰めてくれていたのは星空だ。

 

0時の青森の空。人工物は道路だけ。そこを駆け抜ける自分。そんなシチュエーションで見る星空は最高に美しい。ぴかぴか瞬く星々。

 

オリオン座の方向を目指して走る。秋の夜だから、方角は東だ。 うん。ルートは間違っていない。

 

 

 

休憩はもう予定通りにはいかない。体調やノリに合わせる。駐車場があればそこで横になる。興奮して寝れはしないが、頭がふわふわする。

起き上がるまでに時間がかかる。亀のようにのそのそと動く。

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ロードバイクにまたがれば漕げるようになる。

 

深夜1時。

津軽半島入り。クワガタの左角みたいな場所だ。ここから北上するルートに入る。

 

 

気温は8度。さむい。動き続けなければ凍えてしまう。

広域農道を走っていたので、景色がうら寂しいものだった。両脇は林。たまにガードレールが見えるだけ。深夜の自然の中。街灯なんてない。

 

そんな場所だっただからだろうか。不思議な感覚に落ちた。

 

「あ~この男の人はいま自転車を漕いでいるのか。けっこう息が上がっていて辛そうな顔をしているなあ。ふむふむ~」

 

…自分の顔が見えていた。

  

 

…幽体離脱…?

 

一瞬のことだった。

なにがなんやら意味が分からない。けど幽体離脱だった気がする。寝落ちしていた感じもなかった。頭がマヒしていたので怖いとも感じなかったけど、不思議な気持ちだった。

 

 

あと幽霊が何人か見えていた。いや幽霊っぽいものを見ていた。といったほうが正確かもしれない。脳が処理落ちしていたので、草やポールを人として認識していたかもしれない。

 

最初に見たときは心臓がバクバクしたけど、すぐに慣れてしまった。「あーはいはいはい。また来たのね」と眺めていた。頭がバグっていたんだと今だからわかる。

 

 

そんなスピリチュアルなことよりも、24時間以内に走り切れるのかばかりが気にかかっていた。体力ギリギリで出力できるスピードを維持していた。それでも23km/hが目いっぱいだった。

 

なんでこんなにも走れているんだろうとふと疑問に思う。いままで溜めてきたエネルギーをバーゲンセールで大放出しているんだろうか。火事場の馬鹿力とか、人間の隠されたポテンシャルを引き出しているとか。

 

精神力ってなんだろうとか、哲学ぽいことも考えていた。

 

あんまりにもスムーズに走れているもんだから、

「こりゃあ、未来の分のエネルギーも使ってるわ」

と結論付けていた。(ちょっと自分でも何言ってんのかわかんない)

 

 

最後のコンビニにピットイン。

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暖かいココアと冷たいコーラを買う。

 

ココアをすすりながら、スマホを眺める。

さとる君からLINEでスクショが送られてきていた。

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 さとるくん「ガチでキツいと思うので、あえて頑張れとは言いませんが、おれも全力で走らせてもらいます!少しでも力が伝われば幸いです!」

 

ありがとう、さとるくん。ほんとにありがとう。

一人で歯ぁ食いしばって走ってきたから、ものすごくうれしい。応援されると頑張ろうって思える。

 

 

よし、コンビニ出発だ。

 

最後の山を登る。はあ、はあ、はあ…

痛みも疲れも、何度も味わった。

 

残り58km。猶予は3時間…。

ここまでの21時間は人生で一番長い21時間だった。楽しくてツライ21時間だった。 

 

けど、もう大丈夫。

450km以上走ってきた僕は、ふっと笑った。

…きっと間に合う。

 

山を越えて街中へ入る。

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踏切を見ると「人々の生活圏に戻ってきた」と安堵する。

 

のこり30km。

もどかしいもどかしい30km。

 

あと1時間半で終わるだろう。いかにも町の旧道、という道を通る。路面状態が良くない。ツギハギ状に舗装が直されている。雪国は路面が痛みやすいと聞いたことがある。こぶし大の穴が空いている。

 

そんな道にも慣れてきたころ…

ガガガガアガガガッガ!!!!ガアアガッガガ!!!!

 

ロードバイクが左に傾いていくのが、コマ送りでゆっくり見えていた。

 

あぶない!落車する!!

のこり30kmもないのに、ここでキャノボが終わってしまう。

ケガをしてしまうかも。ロードバイクが壊れてしまうかも。

 

瞬時に考える。

 

「いやだ!!!終わりたくない!!!」

 

ガガガガアガガア!!!

 

イチかバチかで、右へ車体を振る。

この判断は賭けだ。賭けに失敗すれば、ここまでの490kmの努力は実らない。

 

ザザザッザザ…ザアザ。

 

なんとか体勢を立て直し停車できた。たった4秒の出来事だが、とてつもなく長く感じた。

 

 

いったい何が起きたんだ。

 

振り返って、見る。

 

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ジャリ道だ。

 

アスファルトが途切れて、ジャリがむき出しになっている。

危なかった。ほんとに危なかった。ピンポン玉よりデカい石がごろごろしている。

 

こんなところでコケていたら機材に深刻なダメージを負わせていただろう。カーボンフレームが割れていたかも。自分自身もどんなけがを負うことになっていたやら。ゾッとする。

 

舗装のツギハギ状の作り直した路面が続いていたので、これも新しく路面を直したところだろうと無意識に思っていたらしい。ジャリと気づかず高速で突っ込んでしまった。

疲れると単純なミスを犯す。あな、おそろしや。

 

 

このせいでどっと疲れが押し寄せてきた。ダムが決壊するように、溜めてきた疲れが急にやってきた。

 

 

もう事故は起こさない。どんな小さな変化も見逃さないように、細かな注意を払ってバイクを進める。

 

慎重に慎重に。

 

夜も明け、空が白くなってきた。

太陽が上がれば視界も開ける。

 

そしてついに。

とある地点が見えてきた。

 

あそこだ。もう少し…!

 

 

こ、ここだあああ!!!

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ゴオオオオーーーールゥゥ!!

 

 

やったあああああああ!!

できたああ!!国道7号線キャノンボール達成いいいいい!!!!!

うがああああああああああ!!!うれしいいおおおお!!

 

無理だと言われた。できないと思っていた。

途中で何度も音を上げた。やめようと決心したことも何度もあった。

身体はズタボロで、休息も栄養も睡眠も、何もかも足りていなかった。

ただ達成感だけで拳を突き上げていた。

 

それをみたタクシーの運転手さんが、目の前で止まり僕の顔を覗き込んでいた。

…タクシー客だと勘違いされたようだ(*´Д`)すまねえ、タクシーのおっちゃん。

 

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新潟→青森キャノボ515kmを23時間47分で達成。

 

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GALLIUMちゃんもよく走ってくれたよ。

結局、機材はノートラブルだった。素晴らしい。

 

 

これがログ。 

気になる方はのぞいてみてね。

 

いやあ。500kmを走り切るのはきつかった。それを24時間以内と縛りをつけるのもしんどかった。もう2度とやらない。

 

今回は楽なルート取りをしたからぎりぎり達成できたけど、東京-大阪の本家キャノボ達成者は偉大過ぎる。箱根の山を越え、信号まみれの名古屋を超え、走り続けるなんて常人じゃできない業だ。7号線キャノボをやって実感した。ほんと尊敬いたします。

 

 

ここではっきり書いておこう!

もう2度とキャノボなんてやらない!!

 (フリじゃないよ…)

 

これからはゆるゆるの自転車旅をやろう。

 

おわり。